私の理想の王子様
「やっと朝子の顔が見られた」

 須藤はそう言うと、テーブルに置いた朝子の手を優しく握った後、朝子の頬をそっと撫でる。

「も、もう……今日はどうしたんですか?」

 朝子は顔を真っ赤にすると下を向いた。

 須藤は元から距離感が近いとは思っていたが、それでも今日の須藤はやや積極的な気がする。

(もしかして、会うのが二ヶ月ぶりだから?)

 そうだとしたら、こんなに嬉しいことはない。

 朝子は恥じらいながらも須藤の手を取ると、キスするようにそっと唇を当てた。


 食事が順にテーブルに並び、二人は会えない日々にあった出来事を色々と話をした。

 須藤はどうも今後仕事内容が変わるようで、まだしばらくは忙しい日が続くと言っていた。

 朝子も今受けている研修の話や、新プロジェクトの話をたくさん話した。

 そしてプレスリリースでは、男装メイクをして皆の前で新商品をアピールするのだと伝えた。


(こんな風に、瑛太さんと男装メイクの話ができる日が来るなんて、思わなかったな……)

 朝子は須藤と出会った頃のことを思い出してくすりと肩を揺らす。

 初めは須藤に男装がバレているんじゃないかとヒヤヒヤしたものだ。

(でもそれがあったからこそ、私たちは恋人になれたんだもんね)

 朝子がそんなことを思い出していると、目を細めて朝子を見つめる須藤と目が合う。
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