私の理想の王子様
「朝子は、今本当に楽しくてしょうがないんだね。皆の前で王子様になっていた時みたいに、輝いていて……とても綺麗だよ」

 須藤はそう言うと、じっと朝子を見つめながら静かに口を閉ざす。

 なぜかその瞳の深さに意味がある気がして、朝子は戸惑うように須藤を見上げた。

「瑛太さん、何かあったんですか? 今日も急に会いたいって言うし……」

 朝子が眉を下げた顔を上げると、須藤はジャケットのポケットに何かをそっとしまった後、朝子の頬に手を伸ばす。

 須藤の手の温もりが直接伝わり、心臓のドキドキに合わせるように朝子の体温も上がっていった。

 須藤は頬に当てた手をゆっくりと滑らせて、朝子の唇をなぞると、にっこりとほほ笑んだ。


「なんでもないよ。ただ、早く朝子を抱きたいなって思っただけ」

 急に悪戯っぽい笑顔になった須藤に、朝子は顔を真っ赤にする。

「も、もう! 瑛太さんったら!」

 顔を両手で覆い、本気で恥ずかしがる朝子に、須藤はあははと笑い声を上げる。

(いつもの瑛太さんの笑い声だ)

 するとホッとする朝子の前で、須藤が小さく手招きした。

「もう待ちきれないから、そろそろ出ようか」

 甘いささやきにも似た声に、クラクラとめまいすら感じてしまう。

「はい……」

 朝子は赤く染まった頬でこくんとうなずく。

 それから二人は、お互いの手をしっかりと握り締めながら、店を後にしたのだ。
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