私の理想の王子様

それぞれの選択

 いよいよプレスリリースの日、朝子たち新プロジェクトのメンバーは準備の最終確認に追われていた。

 今日は夕方からマスコミ関係者等を招き、ボウ・ボーテの新商品であるジェンダーレスコスメのビーミーシリーズの発表会を行う。

 当然社長も挨拶はするが、メインプレゼンターは朝哉が行う予定になっているのだ。

 場所は都内の高層ビルに入っている会議室で行うため、忘れ物があったら大変だ。

 朝子が備品のチェックを入念に行っていると、外に出ていた由美が首を傾げながら戻って来た。


「ねぇ、朝子ちゃんにお客様なんだけど、この人って知ってる人?」

 由美は再び大きく首を傾げると、朝子に名刺を差し出す。

 朝子は動かしていた手を止めると、不思議そうに由美の手元を覗き込んだ。

「え?」

 差し出された名刺を見た瞬間、朝子は思わず声を上げる。

 そこには出版社らしき社名とともに、中里ミチルという名前が書いてあるのだ。

(ミチルさんが、どうしてここに?)

 朝子は慌てて会社のエントランスに向かうと、不安そうな表情で入り口の近くに立っているミチルを見つけた。


「ミチルさん!」

 朝子が声をかけると、ミチルはパッと勢いよく顔を上げる。

 ミチルは朝子を見た瞬間、一瞬顔を華やがせたが、すぐさま表情は重苦しいものに変わった。
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