私の理想の王子様
「ねぇ朝子。重要なのは身体の距離じゃない。心の距離なんじゃないかと思ったんだよ」

「心の距離……?」

「そう。俺はいつだって朝子を近くに感じてたし、だからこそ頑張れた。それは会えない日が続いても、一ミリも変わらなかった。そう思えたのは、朝子が初めてなんだよ」

「瑛太さん……」

 須藤は朝子の手を取ると、包み込むように両手で握る。


「今俺たちには、やりたいことがあるよね? だったら、今だけはそれをがむしゃらに頑張ってみない? しばらくはこうして手を握ることも、抱きしめることもできないかも知れないけど、それで心が離れるわけじゃない。いつかやり遂げたと思えた日に、見えるものがあると思うよ」

「でも……心が離れてしまったら……?」

 今はそう思っていても、環境が変われば心も変わってしまうかも知れない。

 朝子は不安でたまらない瞳で須藤を見上げる。

 でもその瞬間、そんな不安なんて消し去るように、須藤の強い瞳が朝子を貫いた。


「俺は朝子との未来を見るために、進むことを選ぶよ」

 須藤は握り締めた手に、さらにグッと力を込める。

 朝子は須藤の言葉を聞きながら、静かに瞳を揺らす。

 須藤が何を言おうとしているのか、朝子にはまだはっきりとはわからない。

 会えなければ寂しいし、触れられなければ辛い。
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