私の理想の王子様
 それでも、須藤からの溢れるほどの愛情が朝子に注がれているのは事実だし、その愛情が朝子に自信と力を与えてくれていることは確かなのだ。

「わかりました」

 しばらくして、朝子はそう言うと、真っすぐに須藤の瞳を見つめる。

「私はやりきったと思える日が来るまで、瑛太さんには会わないし、連絡もしません」

「え? 朝子?」

「私は瑛太さんほど強くはないんです。声を聞けば会いたくなるし、顔を見れば抱きしめて欲しいと思う……。だから、やり遂げたと思えるその日まで、連絡はしません」

「令和のこの時代に?」

「この時代だからです」

 須藤は驚いたように目を丸くしていたが、途端にあははと声をあげると楽しそうに笑い出した。


「やっぱり朝子だね。すごく、朝子らしい考え方だ……」

 須藤は朝子を愛しそうに見つめると、腕を伸ばして力いっぱい抱きしめる。

 須藤の広い胸に包まれて、朝子もぎゅっと須藤の背中に手を回した。

(大好きな瑛太さんの香りがする……)

 胸に顔をうずめその温もりに目を閉じる。

 すると朝子はきつく抱き締められながら、須藤がかすかに震えていることに気がついた。
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