私の理想の王子様
「……瑛太さん?」

 朝子が顔を上げようとすると、須藤はさらに腕の力を強めて再び朝子の顔を自分の胸に押しつける。

「俺には敵わないよ」

 朝子の耳元でささやく様に須藤の息が漏れた。

「こっちは、このまま連れて行きたい気持ちを必死に堪えてたのに……これじゃあ、台無しじゃない」

「え?」

 朝子が顔を上げると、須藤の目にはいっぱいの涙が溢れている。

「朝子の前ではカッコつけたかったのにな」

 その声に、朝子の瞳からもどっと涙が溢れ出た。


(あぁ、やっぱり私は瑛太さんが大好きだ)

 朝子は手を伸ばすと、須藤の頬を流れる涙にそっと指先で触れる。

「瑛太さん、愛してます」

 朝子の声を聞いた途端、須藤は堪えきれなくなったように、朝子にキスをした。

 静かな時が二人を包み込むように流れる。

 しばらくして唇を離した須藤は、こつんとおでこを朝子の額に当てた。

「朝子、俺も心から君を愛してるよ」

 触れた額からは、須藤の優しい温もりが伝わってくる。

 正直、須藤と離れて自分が耐えられるのか不安はあるし、どこに行ってもモテる須藤のことが心配な気持ちはある。

 それでも朝子は、今全身に受けている須藤からの愛情を胸に前に進んでいこうと思った。


「気をつけて、行って来て下さい」

 それからしばらくして、にっこりとほほ笑んだ須藤は、一人アメリカへと旅立って行ったのだ。
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