私の理想の王子様

それからの時間

 一年が経ち、朝子は須藤と連絡を絶ってから、二度目のクリスマスシーズンを迎えていた。

 百貨店ではクリスマスコフレの販売を開始し、連日多くの人で賑わっている。

 もともとこの時期は一年で最も集客が多いのだが、今年はそれに輪をかけるように多くの人が店舗に押し寄せている。

 というのも、朝哉が店頭に顔を出すようになったのだ。

 ビーミーシリーズの販売開始以降、朝子は朝哉の姿になり、各百貨店に時々BAとして立つようになった。

 それが話題を呼び、会いに行ける王子様として密かに人気になっているのだ。


 須藤がアメリカに行ってからというもの、朝子は寝る間も惜しんでメイクの勉強を重ねてきた。

 時には休みの日に社外の講習会に参加したりもしている。

 その甲斐もあり、朝子のBAとしての実力は格段に伸び、こうして店頭に立つまでになったのだ。

 朝子が接客したお客様の満足度は非常に高く、それは社内でも評価されている。

 でも、あまりに朝子ががむしゃらに頑張るものだから、由美や間宮は時折朝子のことを心配するようになった。

 「働きすぎだから、休みを取って!」と言われたときもあるし、つい先日など「もう、見ていられないから、彼氏に連絡して!」と言われたほどだ。
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