私の理想の王子様
 それでも、朝子はまだ、自分が仕事をやりきったとは思えていない。

 ビーミーシリーズは順調に売り上げを伸ばしているが、目標値にはまだほど遠く、ジェンダーレスコスメとしての認知度も低いからだ。

 だから離れて一年経った今も、朝子は須藤に連絡することができないでいた。


 そんなある日、今日は一日本社勤務だった朝子は、プロジェクトチームの会議に参加していた。

 今日の会議の議題は“ビーミーシリーズの認知度アップについて”である。

 まずは皆の前に立った由美が一人一人の顔を見つめる。


「今後、もっとビーミーシリーズを知ってもらうために、インパクトのある施策を考えたいの。何か案がある人はいる?」

 由美の声はしーんと静まり返った会議室に響き渡る。

 朝子や間宮を含め、一旦みんなは考え込むように口を閉ざした。

「やっぱり広告が有効だと思うんですが、じゃあどこに向けて広告を打つかってことですよね」

 メンバーの一人が声を上げ、朝子を含めて皆がうーんとうなり声をあげる。


 ジェンダーレスコスメは性別や年齢にとらわれないことを売りにしている。

 でもその売りが、逆にターゲット層を絞れず、うまく広告が機能しないということにつながってしまっているのだ。
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