私の理想の王子様
「なんかこう、ドカンとインパクトのある宣伝ができないものかしらねぇ」

 ドカンの所で大袈裟に手を広げた由美が、みんなの冷ややかな反応にシュンと肩を落とす。

 朝子も資料を見ながら、こめかみに手を当てた。


(インパクトかぁ)

 すると深いため息が室内を包み込んだ時、コンコンと会議室をノックする音が響いた。

 遠慮がちに顔を覗かせたのは智乃だ。

「会議中にすみません。朝子さんにお客様なんですが……」

 小声でコソコソと話す智乃に、朝子は不思議そうに顔を上げる。

「私に?」

 来客の予定など入っていない朝子は、もう一度確認するように声を出した。

「はい。そうなんです。えっと、タウン出版の中里さんと言う方で……」

 智乃は手に持っていた名刺を確認すると、朝子にその名前を告げる。

 それを聞いた途端、朝子ははっと目を見開いた。


(もしかして、ミチルさん?)

 朝子が知っている“中里”と言えばミチル以外はいない。

「すみません。ちょっと失礼します」

 朝子は由美に声をかけると、慌ててミチルの待つエントランスへと向かった。

 ミチルに会うのはちょうど一年ぶりだ。

 須藤の海外赴任の話を聞いた時の記憶が蘇り、朝子は少しだけ身構えた様子で顔を覗かせた。
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