私の理想の王子様
「はい。店舗に行ったのもたまたまですし、間宮さんがメイクしていかない? って声をかけてくれたのもたまたまで……」

「そうそう、たまたまお客様がいなかったんだよねぇ。あ、でも! 私前々から田野倉さんには素質があるなとは思ってて」

「素質? 男装メイクの?」

 江口が興味深々な様子で身を乗り出す。

「はい。だって田野倉さんって普段は大人しそうなのに、芯が通ってるのが垣間見える時があるっていうか。きっと人前に出たら、この人は変わるなって自信があったんですよね」

「さすが間宮さんですね」

「まぁダテに長年BAはやってないですよぉ」

 力こぶを作る間宮に、皆が笑い声をあげる。


 それからは男装メイクのポイントなど技術的な話が続き、インタビューは終始和やかな雰囲気で進んだ。

 取材も終わりにさしかかった頃「ちょっとプライベートなことを聞いてもいいですか?」と、江口が遠慮がちに顔を覗かせる。

 朝子はやや緊張したように「はい、どうぞ」と声を出した。


「男装メイクをしていると、恋愛とかはどうなんですか? 田野倉さんは彼氏さんがいらっしゃるそうですが、初めの反応とかどうだったんでしょう?」

 彼氏という言葉に、朝子は小さく目線を泳がす。

「あ、えーと……」

 頭の中には、須藤のほほ笑んだ顔が浮かび、つい涙腺が緩みそうになる。
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