私の理想の王子様
「すぐ駅員さんに声かけて!」

 誰かの大きな叫び声が聞こえ、朝子ははっと我に返ったように顔を上げる。

 すると、同じタイミングで朝子が支えていた女性も気がついたのか、ふらふらと自分の足で立ちがった。

「とりあえず、ホームのベンチに移動しましょう」

 イケメンが優しい声を出し、朝子はイケメンとともに女性の腕を支えるとホームへと移動した。


「すみません。貧血だと思います……。もう大丈夫です」

 しばらくして落ち着きを取り戻した女性は、朝子が差し出したペットボトルの水に口をつけると、そう言って深々と頭を下げる。

 真っ青だった頬にも次第に赤みがさしてきて、安心した駅員と他の乗客はその場を去って行った。

「安心しました」

 しばらくしてイケメンが、ほっとしたような笑顔をのぞかせる。

 その瞬間、隣に立っていた朝子は、思わずその笑顔に惹きつけられてドキッとした。

(こんなに魅力的な人が世の中にいるんだ……)

 朝電車で会った時も思ったが、この人にはなぜが目線を奪われる。
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