私の理想の王子様

満たされる心

「ミチルちゃんがさ、タウン誌を送ってくれたんだ」

 バスローブ姿の須藤が、ベッドの上で優しく朝子を抱き寄せながら声を出す。

「タウン誌を?」

 朝子は須藤の胸元から顔を上げると、驚いたように目を丸くした。


 あれから二人は須藤が宿泊の予約をしていたホテルに入り、会えなかった時間を埋めるかのように、何度も何度も抱き合った。

 朝子はまだじんじんと疼く自分の身体を感じながら、小さく首を傾げる。

 タウン誌を須藤に送るなど、ミチルはそんな事、一言も言っていなかったはずだ。

 でも須藤の話によれば、アメリカの事務所にミチルから突然封書が届き、中に完成したタウン誌が入っていたというのだ。


「その中に、手紙があったんだけどね」

 須藤はそう言うと、一筆箋に書かれた手紙を差し出す。

 そこには可愛らしいまる文字でメッセージが書かれていた。


『こんな素敵な人を放っておいて、誰かに取られても知りませんよ』

 それを見た途端、朝子は目を丸くする。

「これを、ミチルさんが?」

 すると須藤はくすくすと笑いながら大きくうなずいた。

「ね? 俺が焦って戻って来たくなる気持ちもわかるでしょ?」

 須藤はそう言うと、あははと声を上げて笑う。
< 135 / 147 >

この作品をシェア

pagetop