私の理想の王子様
 まさかミチルがそんなことをしていたなんて、全く思いもしなかった。

 でもそのおかげで、須藤はこうして朝子の元に帰って来てくれたのだ。

(ミチルさんのおかげだ)

 朝子は感謝するように心の中でそう言うと、再び須藤の腰にぎゅっと腕を回す。

 身体に響く須藤の笑い声の振動に揺られながら、朝子は自分の心が満たされていくのを感じる。

 須藤はそんな朝子を再びシーツに添わせると、ゆっくりと唇を重ねた。


「会わない間、朝子がどれだけ努力してきたのか、表紙を見ただけでわかった。本当によく頑張ったね」

 すると吐息とともに須藤の静かな声が響き、朝子の瞳は次第に潤みだす。

 きっと須藤は忙しい合間を縫って、朝子の元に帰って来てくれたのだ。

 朝子はそれが嬉しくてたまらなかった。


「私、がむしゃらに頑張りました。瑛太さんの心を、ずっと近くに感じながら……」

 声を震わす朝子を抱きしめると、須藤は再び朝子の唇を覆う。

 朝子も腕を伸ばすと、より近くに須藤を感じるように、ぎゅっと抱きついた。

 耳元にリップ音が響き、朝子の身体は再び熱くなっていく。

 すると急に須藤が唇を離すと、ふてくされた様な顔を覗き込ませた。
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