私の理想の王子様

エピローグ 私の理想の王子様

 あれから二度目の春がやって来た。

 いつもより早起きをした朝子は冷たい水で顔を洗うと、鏡に向かって「よし」と気合を入れる。

 リビングの電気をつけた朝子は、キッチンに入ると慣れた手つきで朝食の準備を始めた。

 トーストを焼き、サラダとスクランブルエッグを作る。

 ヨーグルトにはお手製の葡萄のジャムをのせた。

 コーヒーを注ぎながら、一人分の朝食はお盆にのせてラップをかける。

 朝子は自分用の朝食を持ってダイニングテーブルに腰かけると「いただきます」と手を合わせた。


 もぐもぐと口元を動かしながら、今日のスケジュールをもう一度確認する。

 今日は朝子にとって、とても大切な日だ。

 そしてその大切な日に、重要なイベントが二つも重なってしまったのだ。

「まず最初は朝哉からだ」

 食事を終えた朝子は、メイク台の前に座ると小さく息を吸う。

 朝子はファンデーションを手に取ると、慣れた手つきで男装メイクを始めた。

 今日はいつもよりはっきりとした顔立ちにした方がいいだろう。

 朝子は頬のシャドーを濃い目に入れると、眉もいつもより太くはっきりと描き、メイクを完成させた。


 準備を終えた朝子は、そっと寝室に顔を覗かせる。

 連日残業が続いているからか、須藤はまだベッドの中だ。

「行ってきます」

 朝子はそっと須藤の頬にキスをすると、気合を入れるように拳を握って玄関を飛び出した。
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