私の理想の王子様
 いよいよ開店時間となり、お客様は次々にステージ前の席に座りだす。

 朝子が緊張した顔で舞台袖に立っていると、ポンポンと誰かに肩を叩かれた。

 見ると笑顔で立っているのはミチルだ。

 ミチルは持っていたカメラを構えると、パシャっと朝子の写真を撮った。


「ミチルさん、どう? 新しい仕事は」

 朝子が声をかけると、ミチルはエヘヘと照れたようにほほ笑んだ。

 タウン誌で表紙の担当をメインで任されていたミチルは、その才能を発揮して、朝哉の表紙以外にもいくつかヒットを出した。

 ミチルのその仕事ぶりが評価されて、つい先月から夢だった雑誌社へ転職したのだ。

「まだまだ始まったばかりという感じですけど、私も朝子さんに負けないくらい、がむしゃらに頑張ります」

 生き生きと話すミチルに、朝子はにっこりとほほ笑み返す。

(みんな夢に向かって進んでるんだ)

 それぞれが新しい道でがんばる姿を見て、朝子も自分に気合を入れた。

 開始時間が迫り、ピンマイクを胸元にセットした朝子は、キリっと朝哉の顔つきになると真っすぐに前を見つめる。

 音楽が華やかなものに代わり、司会の女性がイベントのはじまりを案内する。

 朝子はスポットライトを浴びながら、ステージの中央へと向かった。
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