私の理想の王子様
「皆さんこんにちは。本日メイクデモンストレーションを担当します、朝哉と申します」

 朝哉の声に「きゃー」と歓声が上がる。

 でも、第一声はやはり声が上ずっているように感じた。

(落ち着くのよ、朝子……)

 朝子はそう自分に言い聞かせながら、顔を上げる。

 そして観客席の奥、朝子の正面に立つ人影を見てはっと目を開いた。

 いつもの包み込むような笑顔で、朝子を見つめているのは須藤だ。


(瑛太さん、来てくれたんだ)

 朝子は須藤の顔に小さくうなずくと、急に落ち着きを取り戻したように滑らかに言葉が出てくる。

 そのまま朝子はモデルに向かうと、次々にメイクを仕上げていった。

 今回は三人のモデルにそれぞれ全く違うメイクをする。

 ナチュラルメイク、パーティメイク、そして男装メイクだ。

 手早くメイクを仕上げ、モデルが舞台の中央に立つと、割れんばかりの歓声が上がる。

 朝子は皆に手を上げて歓声にこたえると、手を振りながら舞台を降りたのだ。
< 143 / 147 >

この作品をシェア

pagetop