私の理想の王子様
「異業種交流会と言っても、ほぼ合コンイベントなんです。お二人みたいに素敵な方が参加してくれたら、みんなも絶対に喜びます!」

 女性はそう言いながら立ち上がると、まるで逃がさんとばかりに、朝子のジャケットをグッと引いている。

「会場は三ツ星シェフの有名レストランですし、お食事だけでも……どうですか?」

 女性は頬をピンクに染めると、上目づかいで朝子に顔を覗き込ませた。

「ちょ、ちょっと待ってください……」

 女性の勢いに、朝子は戸惑ったように身体をのけ反らせる。


 自分はたまたま女性が倒れたところを助けただけだ。

 見ず知らずの人と一緒に、イベントなどに参加しても大丈夫なものだろうか。

(しかも、男装の姿で……)

 その時、朝子の脳裏に今朝の電車での出来事が、再び頭をよぎる。

 今は涼しい顔をしているイケメンも、いつ今朝の出来事と今の朝子を結びつけるかわからない。

(やっぱり、ここは断っておいた方がいいよね……)

 朝子がそう思った時、急に隣で立っていたイケメンが、あははと楽しそうな笑い声を上げた。

 朝子は驚いたようにイケメンの顔を見上げる。
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