私の理想の王子様
　辺りはすっかり暗くなっているからか、店舗の中のオレンジ色の照明が幻想的な雰囲気を醸し出している。

　会はすでに始まっているようで、外から見ても多くの人で賑わっている様子がうかがえた。


「随分と大きな会なんですね」

　朝子は本日貸し切りという看板を見ながら、レストランの入り口を抜ける。

　一歩中へ足を踏み入れると、ムッとした熱気に包まれた。

　多くの着飾った女性やスーツ姿の男性たちが歓談する姿に、こういったイベントに参加するのが初めてな朝子は、一瞬気後れしてしまう。

　すると、入り口の辺りで足を止めていた朝子たちの後ろから、「須藤さんじゃないですか！」という黄色い悲鳴が聞こえてきた。

　その声に反応するように、わらわらと辺りの女性たちが集まって来る。

　あっという間に女性に取り囲まれた須藤は、臆することもなく持ち前の軽い笑顔を見せると、会場の奥の方へと連れて行かれてしまった。


「あの人、有名な方だったんですか？」

　目を丸くした朝子が驚いたような声を出すと、どこからかドリンクを取ってきたミチルが、満足げに大きくうなずく。
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