私の理想の王子様
「そうじゃないかって思ったんですよねぇ。須藤さんって、たしか大手商社のエリート営業マンなんですよ。この会にも同じ会社の人たちが参加してるんで、何度か声かけたんですけど、いつも断られてて」

「へぇ」

 朝子は驚いたように声を上げた。

 ミチルは自分が倒れたあの状況の中でも、会の幹事としての役割を全うしようとしていたということか。


「須藤さんらしき人を捕まえたってメールしたら、幹事仲間から大絶賛でしたよ。一気に女性陣の気合いが入った感じだと思います」

 ガッツポーズをしながらくすくすと笑うミチルに、朝子はたくましさすら感じてしまう。

 朝子はミチルからワイングラスを受け取ると、そっとミチルの顔を覗き込んだ。

「じゃあ、ミチルさんも彼の所に行ってきた方がいいんじゃないですか?」

 するとミチルは、口元に当てていたグラスをパッと放すと、慌てたように真っ赤にした顔を大きく横に振る。

「い、いいんです、いいんです! 須藤さんって軽そうじゃないですか。私はその点、硬派な方がタイプですから……」

 ミチルはそう言うと、再び朝子を上目づかいで見上げた。

「そうですか」

 朝子は不思議に思いながら小さく返事をすると、遠くで女性陣に囲まれる須藤の横顔をぼんやりと眺めていた。
< 19 / 147 >

この作品をシェア

pagetop