私の理想の王子様
 会も後半にさしかかった頃、朝子は一旦会場の外へと出る。

 会場の熱気にあてられてしまったので、少し新鮮な空気を吸うためだ。

 外に出ると、レストランの脇には階段があり、上りきったその先のテラスからは中庭が見渡せる造りになっていた。

 朝子はテラスに出ると、手すりから身を乗り出して深く息を吐く。


 目の前のライトアップされた紅葉の色づきを見ながら、ふと会場内でのことを思い出した。

 あれから朝子はミチルに連れまわされる形で会場内を転々と回った。

 ミチルの知り合いだという女性たちと挨拶を交わし、皆の話に耳を傾けた。

 その度に女性たちは朝子にうっとりとして、心から嬉しそうな笑顔を見せてくれる。

 その顔を見ながら、朝子は理想の王子様はこうあるべきなのだと自分にうなずいた。


(いつだって王子様はヒロインを大切にして、溢れる愛で包み込んでくれるもの。私、みんなの理想の王子様になりたい……)

 朝子は心から満たされる気持ちでいっぱいになる。

 きっと自分だったら、みんなの理想の王子様になれる気がするのだ。
< 20 / 147 >

この作品をシェア

pagetop