私の理想の王子様
(なんか、すごい所見ちゃった……)

 朝子はモミジの幹に背中を預けると、はぁと息を吐く。

 今出て行って須藤と顔を合わせるのはまずいだろう。

(須藤さんが向こうに行くまで、ここで待ってよう)

 朝子がそう思った時、パキッと小枝の折れる音が響き、モミジの陰から須藤が顔を覗かせた。

「ひゃっ」

 驚きすぎた朝子は変な声を出してしまう。

 須藤はそんな朝子にくすくすと肩を揺らすと、朝子の隣で同じようにモミジの幹に寄りかかった。


「き、気がついてたんですか……?」

 ドギマギと声を出す朝子に、須藤は悪戯っぽくほほ笑む。

「本当に隠れてたつもり? こんなに幹が細いのに?」

 須藤はよほどおかしかったのか、まだ肩を揺らしている。

 朝子はまじまじと目の前のモミジの木を見上げる。

 確かに枝ぶりはよく、葉は大きく左右に広がっているが、モミジの幹は想像よりも細かった。

 これではコソコソと隠れている姿も、須藤からは丸見えだったのだろう。

「大丈夫。彼女は気がついてなかったからね」

 須藤はそう言うとウインクする。

 そんなキザとも思える姿も、須藤がすると違和感がない。
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