私の理想の王子様
(この人、一つ一つの動作がサマになるんだよね。さっきビンタされた人とは思えない)

 すると、そんな失礼なことを考える朝子の前に、須藤が顔を覗き込ませた。

「ねぇ朝哉クン、ちょっと歩かない?」

「え?」

 朝子はしばらく逡巡した後、小さくうなずくと須藤と並んで遊歩道を歩き出す。


「やっぱり、叩くのは反則だよね」

 しばらく無言で歩いていると、ふと須藤が口を開いた。

 手は叩かれた左の頬をそっと撫でている。

 その姿に朝子は思わずぷっと吹き出すと、くすくすと楽しそうに肩を揺らした。

「でも須藤さんも、もう少し言い方があったんじゃないですか?」

「どういうこと?」

「僕が王子様だったら、彼女を傷つけないように、もう少しオブラートに包むとか……」

 すると須藤は静かに足を止める。

「そうかな? 君は本当にそう思うの?」

「え?」

「あそこで俺が期待を持たせる行動を取ったら、彼女はどうなる? 期待に応えられないのに、いたずらに人の心を惑わすのは良くないと思うよ」

 予想外に須藤に反論されて、朝子も思わず足を止めた。

「た、確かにそうですけど……理想の王子様だったら、もっと優しくするかなって……」

 朝子がそこまで言ったところで、須藤は急にぐっと朝子の腕を引く。
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