私の理想の王子様

王子様の戸惑い

 だんだん小さくなる須藤の背中をじっと見つめながら、朝子は力が抜けたようにその場にへたり込んだ。

「……びっくりした」

 あんな風に、男性に迫られた経験なんて今までしたことがない。

 朝子はドキドキと早いスピードで叩く心臓を、ぎゅっと両手で押さえつけた。

「完全にキスされると思った」

 朝子は須藤の口先がかすめた、自分の唇にそっと指先を当てる。


 須藤の行動の意味がわからない。

 だって今の朝子は、男装した朝哉なのだ。

 はたから見れば、イケメン同士のラブシーンに見えただろう。

(それに、私に興味があるって、どういうこと……?)

 朝子は大きく息を吐きながら立ち上がると、ワイドパンツの裾についた土や枯葉を払い落とした。

 心臓はまだドキドキと高鳴っている。

 須藤の顔が間近に迫った時、朝子は完全に自分が朝哉であることを忘れていた。

 須藤は朝哉の中にある、朝子の存在に気がついたからこそ、あんな行動を取ったのだろうか?

 そう考えながら、朝子は大きく首を横に振る。
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