私の理想の王子様
「朝哉さん! こっちこっち」

 遊歩道から戻った朝子は、ミチルの明るい声にはっと顔を上げた。

「朝哉さん、急にいなくなっちゃうんですもん。すごく探しちゃいました」

 ミチルは眉を下げた顔を覗き込ませると、朝子に焼けた肉の乗った皿を手渡す。

「ちょっとそこら辺を散歩してました」

 朝子がにっこりとほほ笑みながらそう言うと、ミチルは心の底からホッとしたような顔をした。


 手渡された肉を口元に運びながら、朝子は先に戻ったはずの須藤の姿をそっと探す。

 どうも須藤は、再び女性たちに捕まったのか、奥の方の席に腰かけて皆と談笑していた。

 ぐるりと辺りを見渡すと、須藤をビンタした女性はすでに帰ってしまっているようだ。

 あははと響く楽しそうな声を聞きながら、朝子は再び須藤の横顔を盗み見た。

 目の前の女性たちに柔らかな笑顔を見せる須藤の顔つきは、さっき朝子に迫った時とは全く違う表情をしている。

(相手が朝哉だったから、あんな強引なことをしたの?)

 須藤が何を考えているのか全くわからない。

『俺は君に興味がある』

 そう言いながら口元を引き上げる須藤の深い瞳の色の意味も、今の朝子には何一つわからなかった。
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