私の理想の王子様
 あの時ミチルは、深い意味はないと笑っていたが、もし本心が違ったのだとしたら?

(まさかね。だって、朝哉の中身は私なんだよ……?)

 そう自分に言い聞かせながらも、朝子の中にふつふつと不安の渦が湧いてくる。

(もし、ミチルさんが本気で朝哉に恋をしていたら? 須藤さんが言うように、人の心を弄んでいることになるの……?)

 朝子は現実にはいない理想の王子様を演じていた。

 それはみんなが喜ぶと思ったからであって、恋愛とは違う世界の王子様になりたかったのだ。

 でも、その朝哉に恋をする人が出てくれば、それはその人を騙していることになってしまう。


(どうしたらいいの……)

 朝子は小さく目線を揺らす。

 一度に色々なことが起こり、訳がわからなくなってくる。

 それでも確かなのは、二人に会わなければ何もわからないということだけだ。

 朝子はしばらく考え込んだのち、静かに顔を上げた。


(忘年会に参加しよう。そして、須藤さんとミチルさんに会ってくる)

 朝子は心を決めたように唇をキュッと結ぶ。

(そして、朝哉になるのは、これが最後だ……)

 朝子は深く息を吐くと、スマートフォンの画面を閉じたのだ。
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