私の理想の王子様
 どれだけキスを重ねたのだろう。

 はぁはぁと何度も甘い息を零した二人は、しばらくして、ようやくお互いの顔を見つめ合った。

 気がつけば展望台には誰もおらず、寒さは一層強まるばかりだ。

 それでも朝子の身体は燃えるように熱い。


(私、どうしちゃったの……?)

 強引にキスされたはずなのに、不思議と嫌だとは思わなかった。

 むしろもっとと求めるように、自分から積極的に絡めてしまった気もする。

 すると朝子が潤んだ瞳を上げた時、ガチャリと奥の方でバルコニーの扉が開く音が聞こえた。


「朝哉さん! 須藤さんも、まだそこにいるんですか?」

 扉から顔を覗かせているのはミチルだ。

 ミチルの位置からは、須藤の背中に隠れて、二人が何をしていたのかは見えないだろう。

 それでも朝子は、パッと須藤から距離を取るように後ずさりする。

(どうしよう。こんな顔見せられない……)

 朝子は慌てて自分の口元に手を当てると、顔を隠すように下を向いた。

 きっと今の自分は朝子の顔をしている。

「朝哉さん? 何かあったんですか?」

 するとミチルがこちらへ来ようと足を出す。

「だ、大丈夫です!」

 朝子がそれを止めようと声を出した時、朝子の前に立っていた須藤が先に軽く手を上げた。

「ごめんねミチルちゃん。朝哉クンと、少し話してたんだ。もうそっちに戻るよ」

 そう言いながら歩き出した須藤に、ミチルは足を止めると、ほっとしたように「そうですか」と応えている。
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