私の理想の王子様
「そんなことありません!」

 すると智乃が大まじめな顔を覗き込ませた。

「この投稿見てくださいよ! みんな王子様に会えて幸せって言ってるんですよ! 朝子さんはちゃんと、みんなの理想の王子様だったんです」

 大きく拳を振る智乃に、朝子は次第に瞳が潤んでくる。

 てっきり智乃にも、他の社員と同じように、好奇の目で見られると思っていたのに。

「ありがとう。でも私、皆を騙して……」

 朝子がそこまで言った時、智乃は大きく首を振ると朝子の両手をぎゅっと握った。


「今の時代、性別を超えた魅力ってあってもいいと思うんです。私だって、朝子さんみたいにスタイルがよかったら、こんな風になってみたいって思いますもん」

 智乃はくすくすと笑いながら「もしかして」と朝子に顔を覗かせる。

「この前言ってた『君に興味がある』って言った人も、ここで知り合った人なんですか?」

 智乃の言葉に、須藤の顔が浮かぶ。

 朝子は「うん」と小さくうなずいた。


「彼はね、本当の私を知らないの。男装メイクの姿で出会ったからね。でも、私は彼を好きになってしまった」

「朝子さんは、どうしたいんですか?」

「え……」

 朝子はしばらく逡巡した後、静かに顔を上げる。

「私は、彼に本当の自分を見て欲しい」

 朝子の声に、智乃は大きくうなずいた。

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