私の理想の王子様
「私のせいで、須藤さんにもミチルさんにも迷惑をかけて……」

 落ち込んだようにうなだれる朝子に、須藤が顔を覗かせる。

「ミチルちゃんはさ、朝哉クンに本気だったんだよね。だから、あんなにもショックを受けたんだと思うよ」

 須藤の言葉に朝子は静かに顔を上げる。


 一旦息を吐くと、朝子は決心したように須藤を見つめた。

「最初はほんの出来心だったんです。たまたま男装メイクをしてもらって、その姿で街を歩いたら、みんなにカッコイイって言われて。すごく気持ちがよかった。その時思ったんです。自分が理想の王子様になればいいんじゃない? って……」

 朝子の話に須藤は静かに相槌を打つ。

「私はずっと理想の王子様を求めてました。二次元の世界にいるような王子様。だから私が王子様を演じることで、皆も幸せになってくれるんじゃないかって思った。でも……」

「でも?」

「ダメでした。私は王子様になりきれなかった。そして何より、ミチルさんやみんなを騙して傷つけた」

 朝子は深く息をつくと、顔をうつ向かせる。

 須藤はしばらく口を閉ざしていたが「朝子ちゃん」と優しく声を出す。

「騙されたと思うかどうかは、人それぞれなんじゃないかな?」

「どういう意味ですか……?」

「だって実際俺は、朝子ちゃんの姿であっても、朝哉クンの姿であっても、君自身に興味を持ったわけだしね」

 須藤の言葉に、朝子は次第に自分の身体の内側が熱くなるのを感じる。
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