私の理想の王子様
「で、でも……私はミチルさんを傷つけた」

「そうだね。それはミチルちゃんに、本当のことを言う必要はあると思うよ。でも、そこから始めればいいんだよ」

「そこから?」

「また“はじめまして”からやり直せばいいんだよ」

「須藤さん……?」

 朝子は戸惑ったように顔を上げる。

 こんなに拗れてしまったのに、もう一度やり直すことなんてできるのだろうか。

(でも、できるなら、私も最初からやり直したい)

 朝子がそう思った時、須藤が朝子の前に右手を差し出した。


「俺たちも、もう一度初めからやり直さない?」

 須藤の優しさに、朝子の瞳が次第に潤みだす。

 朝子はこくんとうなずくと、そっと須藤の右手を取った。

 その瞬間、須藤の長い指先にキュッと力がこもり、優しいぬくもりが伝わってくる。

 この広くて大きな手は、いつだって溢れる愛で包み込んでくれるヒーローのようだ。

 朝子は自分も指先に力を込めると、真っすぐに須藤を見つめた。


「はじめまして。須藤瑛太です」

 須藤の声は朝子の心に直接響く。

「はじめまして。田野倉朝子です」

 朝子がはにかみながら声を出すと、目の前で須藤があははと楽しそうに笑顔を見せた。

(あぁ私、この人が好き……本当に大好きなんだ)

 朝子はピンク色に染まった頬を揺らすと、自分も須藤に負けないくらい満面の笑みを見せる。

 そして二人は手を取り合ったまま、いつまでもお互いのことを見つめていた。
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