私の理想の王子様
 朝子はタイトスカートを押さえながらソファに座り直すと、チラッと須藤の姿に目線を送る。

 カフェで話をして以来久しぶりに見る須藤は、やはりカッコよすぎてドキドキが一気に頂点まで昇る勢いだ。

 今日はシンプルな黒のニット姿だが、さっきから店内の女性たちの視線を集めているところを見ると、ただ座っているだけでも魅力が駄々洩れなのがわかる。

(ダメダメ、今日はミチルさんと話すことが目的なんだから)

 朝子はプルプルと首を振ると、再び姿勢を正してソファに座り直した。


 その時「こんにちは……」とやや遠慮がちな声が後ろから聞こえてくる。

 はっと振り返った朝子の前で、目線を逸らすように立っているのはミチルだ。

 朝子が慌てて立ち上がろうとすると、須藤が(大丈夫、俺に任せて)とアイコンタクトを送ってくる。

 朝子は再び腰を沈めると、うつむくミチルをそっと見つめた。


「ミチルちゃん、こんにちは。急に誘ってごめんね」

「……いえ。何も予定もなかったので、大丈夫です」

 ミチルは弱々しくそう言うと、須藤に促されるまま、朝子の向かいのソファに腰かけた。
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