私の理想の王子様
「ミチルさん、私ね、本当の名前は朝子って言うの。忘年会の日は逃げるように帰ってしまって、そして連絡も断ってしまってごめんなさい」

 朝子は一旦息をふっと吐くと、呆然とするミチルの顔を真っすぐに見つめる。

「私ね、男装メイクをして朝哉になってたの」

「男装……メイク?」

「そう、ミチルさん達に出会った日、たまたま男装メイクをしてもらってね。私、ミチルさんが勘違いしているのを知りながら、朝哉と名乗ったの」

 朝子の言葉にミチルが小さく目線を上げる。


「私ね、みんなの理想の王子様になりたかった。ただ憧れるだけの王子様……。だから、こんなにも深く人と関わることになるとは思ってもいなかった。そんな私の浅はかさが、結果として、皆を騙すことになったし、ミチルさんを傷つけることになってしまった」

 朝子はそこまで言うと、深く息を吐いて下を向く。

 ミチルはきっと怒っただろう。

 本気で恋した相手が、自分を騙していたのだ。

(どんなに罵られてもしょうがない……)

 朝子がそう覚悟した時、目の前でミチルが急にくすくすと笑いだす声が聞こえてきた。

 朝子は驚いたように顔を上げる。
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