私の理想の王子様
 突然のミチルの宣言に、朝子は驚いてミチルを振り返る。

 ミチルはエヘヘと照れたように頭に手をやった。


「本当は、このままじゃいけないなってわかってたんです。でもズルズルと続けちゃってた。いい機会なので、きっぱり辞めます」

「そんな、でも出会いの場だったんでしょう?」

 自分のせいで、ミチルの大切な出会いの機会を奪ってしまったのだ。

 戸惑ったように目線を揺らす朝子に、ミチルはにっこりと笑顔を見せた。

「いいんです。元々仕事から逃げたかっただけだし」

 ミチルは再びソファに座り直すと、小さく肩をすくめる。


「私、地域のタウン誌を作る出版社に勤めてるんです。でも営業はきついし、何やってもうまく行かなくて。結婚して辞めてやるって、それしか考えてなかったんです。恋愛を逃げることに使おうとしてた」

「ミチルさん……」

「私、もう一度自分を見つめ直してみます。お二人に負けないくらい、私もキラキラと輝けるように」

 今のミチルの瞳は、ここに来た時とは比べ物にならない程、パワーがみなぎっている。

 朝子は須藤と顔を見合わせて、にっこりとほほ笑むと、ミチルに大きくうなずいたのだ。
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