私の理想の王子様
「俺も朝子ちゃんのことが好きだよ。つまりそれって、両想いってことじゃない?」

 わざとおどける須藤に、朝子は胸元をコツンと叩く。

「もう、須藤さんたったら」

 するとぷっと頬を膨らませようとした朝子の唇を、須藤の吐息がかすめる。

 吐息は次第に熱を帯び、二人は惹かれ合うように静かに唇を重ねた。


 キスはついたり離れたりを繰り返しながら、ゆっくりとお互いの存在を確かめるように繰り返す。

 次第に高鳴っていく胸のドキドキを感じながら、あの日と同じように、白い息に混じってリップ音を響かせた。

 するとしばらくして、冷たい風が頬を撫でた頃、須藤がそっと顔を上げる。

 その顔を見た途端、朝子の中でたまらなく熱いものが込み上げた。


「ねぇ、朝子ちゃん」

「あの、須藤さん」

 二人は同時に声を出し、くすりと笑った須藤が「朝子ちゃんが先にどうぞ」と言う。

 朝子は激しくドキドキと叩き出す鼓動を抑えるように息を吸うと、須藤を上目づかいで見つめた。


「あの……今日は須藤さんをお持ち帰りしてもいいですか?」

 勇気を振り絞って出した言葉は、ややトンチンカンになってしまったような気がする。
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