私の理想の王子様
「ご、ごめんなさい。普通は逆ですよね。なんだか私、舞い上がっちゃって……」

 慌てたようにまくし立てる朝子に、須藤は一瞬キョトンとしたような顔をしていたが、ぷっと吹き出すとあははと声を上げて笑い出した。

 須藤はお腹を抱えると、心の底から楽しそうな笑顔を見せる。

「さすが朝子ちゃんは、みんなの王子様だっただけはあるね。そんな事言われたの、初めてだよ」

 須藤は再びあははと声を上げると、腕を広げて愛しそうに朝子を抱きしめた。

「俺も、お持ち帰りされたいって思ってた」

 朝子の耳元で甘い声が響き、朝子は頬を真っ赤に染める。

「もう、須藤さんったら」

 すると顔を真っ赤にして恥ずかしがる朝子の前に、須藤が眉を下げた顔を覗き込ませた。


「本当のこと言うとね、この前のキスの時も、かなり我慢したんだよね」

 チラッと朝子を横目で見ながら、甘えた声を出す須藤に、朝子の心はドキュンと撃ち抜かれる。

(こんなヒーロー、少女漫画の世界にも絶対にいない)

 朝子はくすくすと肩を揺らすと、須藤の耳元に顔を寄せた。

「じゃあ今日は、我慢しなくていいですよ」

 朝子の言葉を聞いた途端、須藤は「参ったな」と笑い声をあげる。

「じゃあ行こうか」

「はい」

 そして二人は、お互いの肩を寄せ合いながら、駅へと向かって歩き出したのだ。
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