私の理想の王子様
 すると気を取り直すように咳ばらいをした由美が、朝子に真剣な表情を覗き込ませる。

「実は朝子ちゃんには話してなかったんだけどね。朝子ちゃんのSNSの話題が社長の耳に入ったの」

 思いもよらない話に、朝子は「え……」と動揺したように声を上げると須藤を振り返った。

 須藤も驚いたような顔をしている。

「そ、それで……?」

 不安な顔をする朝子に、由美はにっこりとほほ笑んだ。

「今ね、新プロジェクトが立ち上がろうとしてるの」

「新プロジェクト?」

「そう! 簡単に言えば、今の化粧品シリーズの他に、ジェンダーレスコスメシリーズを作ろうって話なの」

「ジェンダーレスコスメ……?」

 朝子は聞き慣れない言葉に大きく首を傾げた。

 ジェンダーレスということは、男女共用のコスメということだろうか?

「どういうことですか?」

 話の流れがわからない朝子に「つまりね」と由美が口を開く。


 由美の話によれば、社長はボウ・ボーテの次なる成長のために、今とは違う商品の販売戦略を考えていたそうだ。

 そんな時、朝子の男装メイクの話題が社長の耳に飛び込んだ。

 SNSでバズった朝子の写真を見た社長は、朝子がボウ・ボーテの化粧品のみで男装メイクをしていたことを知り「次の戦略はこれだ!」とすぐさま決断に至ったのだそうだ。
< 91 / 147 >

この作品をシェア

pagetop