私の理想の王子様
「実は今回のデモは、お客様の反響を見るためのものって位置づけもあってね」

「そうだったんですね」

 朝子は驚きながらも、納得したように声を出す。

 だから顔の左右で全く違うメイクをしたのだと、やっと理解できた。

「朝子ちゃん」

 すると由美が急に朝子に向き直る。

 由美はいつになく真剣な表情を朝子に向けた。

「私たちは、朝子ちゃんにもプロジェクトに加わって欲しいと思ってる」

「……私に?」

「そう、そして……ぜひ、朝哉くんをキービジュアルにしたいっていうのが、私たちの案なの」

 由美の提案に、朝子は目を見開くとしばらく固まったように立ち尽くしてしまう。

「朝哉を……キービジュアルに……?」

 戸惑う朝子に、由美は大きくうなずく。


 由美の説明によれば、ボウ・ボーテの化粧品をジェンダーレスコスメとして売り出すために、朝哉を広告の柱として前面に打ち出したいというのだ。

 年齢や性別を越えて愛用できるものだというアピールには、それが一番インパクトもあり効果的だと社長も期待しているという。

「もちろん、これは私たちの案という段階。朝子ちゃんが拒否すれば、私たちは違う方法を考える」

 由美はそう言うと、朝子に真っすぐに向き直った。
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