私の理想の王子様
本当にしたいこと
「朝子?」
隣を歩く須藤が顔を覗き込ませ、朝子ははっと我に返る。
あの後、由美と別れた朝子は必要な買い物を済ませ、夕方過ぎに須藤とマンションへ帰ってきた。
マンションの階段を上りながら、朝子は小さく息をつく。
“朝哉をキービジュアルに”という由美の申し出に、心が揺れなかったと言えばそれは嘘だ。
あの場では断ったが、本当は凄く気になったし、もっと話を聞いてみたいとも思った。
(でも、もう男装メイクはしないって決めたんだもん)
朝子は自分の気持ちを納得させるように、再び息をつく。
たとえ『これは男装メイクです』と言って、表に出るようになったとしても、朝子が朝哉を演じてミチルや他のみんなを騙した事実は変わらない。
やはり朝哉として、人前に出ることなんて自分にはできないのだ。
「はぁ」
朝子が再び息を吐いた時、須藤がグッと顔を覗き込ませる。
「これで三回目」
「え?」
「朝子のため息の数」
朝子はドキリとして背筋を正す。
せっかくの須藤とのデートの日だったのに、これでは台無しではないか。
最近は須藤の仕事も忙しく、会える日は限られているというのに。
隣を歩く須藤が顔を覗き込ませ、朝子ははっと我に返る。
あの後、由美と別れた朝子は必要な買い物を済ませ、夕方過ぎに須藤とマンションへ帰ってきた。
マンションの階段を上りながら、朝子は小さく息をつく。
“朝哉をキービジュアルに”という由美の申し出に、心が揺れなかったと言えばそれは嘘だ。
あの場では断ったが、本当は凄く気になったし、もっと話を聞いてみたいとも思った。
(でも、もう男装メイクはしないって決めたんだもん)
朝子は自分の気持ちを納得させるように、再び息をつく。
たとえ『これは男装メイクです』と言って、表に出るようになったとしても、朝子が朝哉を演じてミチルや他のみんなを騙した事実は変わらない。
やはり朝哉として、人前に出ることなんて自分にはできないのだ。
「はぁ」
朝子が再び息を吐いた時、須藤がグッと顔を覗き込ませる。
「これで三回目」
「え?」
「朝子のため息の数」
朝子はドキリとして背筋を正す。
せっかくの須藤とのデートの日だったのに、これでは台無しではないか。
最近は須藤の仕事も忙しく、会える日は限られているというのに。