新堂さんと恋の糸
つい最近まで比較的片付いていたそこは、かなり乱雑に散らかっていた。もしかしたら忙しくて、シュレッダーにかけるのを後回しにしているのかもしれない。そんなことを思いながら私は散らかった紙をデスクの中心に集めていく。トントンと揃えていると、電話を終えた新堂さんが戻ってきた。

「新堂さん、これシュレッダーにかけておきましょうか?」

少しでも忙しい新堂さんの役立ちたいなと思って軽く声をかけると、新堂さんは慌てた様子で近づいてくると、ばっとひったくるように私の手から奪い取る。

「あっ…」

そのあまりの勢いにびっくりしてしまって、私は呆気に取られて立ち尽くしてしまう。

「あ、…すみません勝手に」
「いや…これは俺がやっておくから」

(…余計なことだったかな)

ばつが悪そうに背中を向ける新堂さんに、私は少し気持ちが沈んでしまった。

オフィスに気まずい沈黙が流れる。そのとき、テーブルに置いたスマートフォンの着信音が鳴った。こんなときに誰、と思いつつ出ないわけにもいかずに手に取ると、園田編集長からだった。

「…もしもし、櫻井です」
「あぁよかった、櫻井さん、今大丈夫?」

本当はあまり大丈夫ではない状況だけれど、はいと答えるしかない。
それに珍しく声が切羽詰まっているような気がする。もしかして、また仕事のヘルプとかだろうか。

けれど、落ち着いて聞いてねという編集長に告げられた内容は私の想像を超えたもので、理解するまでに時間がかかってしまった。

「……ネットに、流出…?」

< 119 / 174 >

この作品をシェア

pagetop