新堂さんと恋の糸
数日間は修正に追われ続けたけれど、どうにか印刷会社から提示された締切に間に合う目途が立った。
編集長に校正原稿を送信した瞬間、糸が切れたみたいに力が抜けた。
「お疲れ様。大変だったけれどよくやり切ってくれたわね」
私が机に突っ伏していると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、園田編集長が私にコーヒーが入った紙コップを差し出してくれていて、私はお礼を言って受け取った。
「そんなことないです。私の方こそ、たくさんご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「気持ちは分かるけど、今回のことをあんまり背負い込みすぎようにね。じゃあ最終校正と印刷会社へのデータ送付は私が引き受けるから」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
私はほっとしてコーヒーに口をつける。普段ブラックではほとんど飲まないけれど、今は疲労のせいかキリッとした苦味で頭が冴えていくような気がした。
「ところで櫻井さん、ちょっといい?」
園田編集長は軽く私に目配せをして、編集部の奥にある会議室を示す。
私が後について会議室に入ると、編集長は窓につけられたブラインドをカシャンと閉めた。その音を聞いた瞬間、なぜか嫌な予感が胸の奥でじわっと広がった。
編集長は少し困ったような、言いづらそうな様子で「あのね、」と切り出した。
「実は次号の特集記事のことなんだけど……櫻井さんは外れてもらうことになったの」
(………え?)
今回のことで休載や打ち切りになってしまうかも、という最悪の想像は少ししていた。けれどなぜか『担当を外れる』ということは、想像していなかった。
私は思考が追いつかなくて、頭の中が真っ白になる。
編集長に校正原稿を送信した瞬間、糸が切れたみたいに力が抜けた。
「お疲れ様。大変だったけれどよくやり切ってくれたわね」
私が机に突っ伏していると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、園田編集長が私にコーヒーが入った紙コップを差し出してくれていて、私はお礼を言って受け取った。
「そんなことないです。私の方こそ、たくさんご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「気持ちは分かるけど、今回のことをあんまり背負い込みすぎようにね。じゃあ最終校正と印刷会社へのデータ送付は私が引き受けるから」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
私はほっとしてコーヒーに口をつける。普段ブラックではほとんど飲まないけれど、今は疲労のせいかキリッとした苦味で頭が冴えていくような気がした。
「ところで櫻井さん、ちょっといい?」
園田編集長は軽く私に目配せをして、編集部の奥にある会議室を示す。
私が後について会議室に入ると、編集長は窓につけられたブラインドをカシャンと閉めた。その音を聞いた瞬間、なぜか嫌な予感が胸の奥でじわっと広がった。
編集長は少し困ったような、言いづらそうな様子で「あのね、」と切り出した。
「実は次号の特集記事のことなんだけど……櫻井さんは外れてもらうことになったの」
(………え?)
今回のことで休載や打ち切りになってしまうかも、という最悪の想像は少ししていた。けれどなぜか『担当を外れる』ということは、想像していなかった。
私は思考が追いつかなくて、頭の中が真っ白になる。