新堂さんと恋の糸
 (そういえば、デザイン工学の研究室でテキスタイルを用いた強化繊維の研究論文を読んだな)

 炭素繊維を編み紐状に組んで強度を出す――あれなら、イメージしている「組み紐の鎖」に使えるかもしれない。

 そう思い当たって、俺は大学時代に世話になった研究室に連絡を入れた。
 事情を話すと、教授はすぐに協力を引き受けてくれて、「必要な強度の計算はこちらでやるから、その結果を見て具体的な仕様を詰めよう」という話でまとまった。

 数日後、研究室からの連絡があったのだが、ちょうどギャラリーの担当者の手違いでトラブルに見舞われて、折り返すことができずにいた。そして一段落ついた頃には、さすがに疲労も気疲れも限界に近かった。

 「新堂くん、覚えてる?大学で一緒だった麻生だけど」

 麻生杳子から事務所に連絡が来たのは、そんなときだった。
< 153 / 174 >

この作品をシェア

pagetop