新堂さんと恋の糸
 「……えぇっ!?」
 「ほらな?絶対驚くって言っただろ」
 「本当だね」

 驚きすぎている私を見て、二人はそんなことを言いながら笑っている。

 「え、え、それってデザインの学校ですよね?」
 「そう。でも今までみたいにアシスタントの仕事もしたいから、夜間に通おうと思ってさ。一日二コマで十八時から二十一時半までだから、働きながらでも通えるかなって。今日はこれからその説明会」

 また学校に通うと決めたこと。
 玲央くんにとっては過去のこともあるし、簡単な決断じゃなかったはず。

 『玲央も変わってきてるし』

 梓真さんが言っていたのは、このことだったんだ。
 食べ終えた玲央くんがじゃあそろそろ行くね、と事務所のドアを開ける。

 「いってらっしゃい」
 「うん、いってきます」

 玲央くんがドアの向こうに消えた――と思うと、ドアの隙間から悪戯っぽい笑みを浮かべた顔がひょこっと戻ってくる。

 「イチャイチャしてもいいけど、ほどほどにね?」
 「……っ!?」
 「ったく、早く行け」
 「十八時までには帰ってくるからさ、久しぶりに三人でごはん食べようよ」
 「もちろんです!待ってますね」

 玲央くんはじゃあねーとニコニコと手を振ると、今度こそドアが閉まった。

 「……びっくりしました、玲央くんのこと」
 「自分から言いたいからって口止めされてたんだよ。学校も二駅先だから無理なく通えるだろうし、夜間なら生徒数も多くないから玲央に合ってると思う」
 「みんな、前に進んでるんですね」

 季節が巡って、少しずつ新しい風が吹いている。
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