新堂さんと恋の糸
 「そうだ、これシュレッダーにかけといて」

 手渡されたクリアファイルの中には、たくさんのデザイン画が入っている。

 「これ全部廃棄でいいんですか?」
 「あぁ。さっきの打ち合わせで却下になったから」

 新堂さんは事もなげに言うと、デスクの上にある段ボールを覗く。その中には、私がシュレッダーにかけるのを後回しにしていた、ボツ案のデザイン画がすべて入っている。

 「あんまりじろじろ見るなよ」
 「え?あ、そんなつもりじゃなかったんですけど……すみません」

 新堂さんの鋭い声が飛んできて、私は反射的に謝った。すると新堂さんは少しだけバツが悪そうに、息をついた。

 「昔、一度だけ全部見せた相手がいる」
 「……え?」

 言葉の温度が、さっきとまるで違った。
 冷たくて――どこか怒りが滲んでいるような声。

 「でも、結局最後はめちゃくちゃにされて終わった……だから、他人を事務所に入れるのは好きじゃない。余計なものまで見られて、探られるから」

 私は息をのんだ。新堂さんが、一瞬だけ見せた本音。
 これまで取材を断り続けている理由がそこにある気がしたけれど、軽い好奇心では踏み越えてはいけない領域の話だと分かった。

 「私は、そんなつもりじゃ……」
 「分かってる」

 新堂さんは小さく息をつくと、段ボールの中から一番上の一枚を手に取った。
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