新堂さんと恋の糸
 「どうかした?」
 「……その、なんかもったいなくて」
 「何を選ぶかはクライアントが決めることだ。いちいち引きずってたらやってられない」

 感傷に浸る私とは対照的に、新堂さんは割り切っているみたいにあっさりと言った。けれど私の手は、どうしても動かない。

 「まさか、それでこの段ボールもそのまま置いてあるのか?」
 「そうですけど……」

 新堂さんは呆れたようにため息をつくと、私からファイルを取り上げた。そしてデザイン画を取り出して躊躇いなくシュレッダーに突っ込む。

 「わっ、あああ……!!」

 ガーッという大きい音とともに紙が吸い込まれて、一瞬で細かい断片になってしまった。呆然とする私を横目で見ながら、新堂さんは段ボールを引き寄せる。

 「もしかして、全部かけていくんですか?」
 「当たり前だ。いつまでも置いてたって片付かない。ただの紙くずだ」
 「……そんなことないですっ」

 思わず反射的に声が出る。
 
 「今回選ばれなかった、というだけですべてが駄目なわけじゃ、」
 「最後まで聞け」
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