新堂さんと恋の糸
そうしているうちに一時間を過ぎた。
打ち合わせ時間の予定は十二時半まで。あと三十分。クライアント側は三人でああでもないこうでもないと議論し始めている。
(この感じでまとまるのかな……?)
前の部署にいたときに参加した社内会議に似ている。発言が少なくて停滞するのも困るけれど、白熱しすぎるのも考えものだ。
(これは長引きそうだなぁ)
時折り議論の合間に「これは違うな」とか「あんまり面白みがない」といった言葉が耳に聞こえてきた。
(相手が目の前にいるのにそういうことを言うって、打ち合わせでは普通なの?)
私はシュレッダーにかけた大量のボツ案のことや、この打ち合わせに間に合うように模型作り準備した玲央くんのことを思い出してしまう。たった一言で簡単に却下するけれど、その裏にどれだけかけて準備しているのか分かっているんだろうか。
そんなことを考えていると、隣りから私のノートに手が伸びてきて、余白にペンで何かが書かれた。
『ひどい顔だぞ』
私は思わず新堂さんを見る。たぶん思っていたことがよっぽど顔に出ていたみたいだ。
さらにその下にしかめっ面をした顔――たぶん私の似顔絵を描くものだから、私は思わず『打ち合わせ中ですよ』と書いて『打ち合わせ』の部分を強調するように丸で囲む。
《こいつら毎回こう。話が長い》
(こいつらって、言い方……)
《新堂さんもひどい顔ですからね》
少し顔を上げて新堂さんの顔を盗み見ると、すっかりこの場に興味をなくしたような顔だ。 それから私たちは、まるで真剣にアイデアを書き出しているフリをしながらしばらく筆談をする。
《時間通りに終わるか賭ける?》
《賭けません》
だんだんと内容が仕事から逸脱し始めたとき、ようやくクライアント側の話がまとまったようで、新堂さんが提案したうちの二つを商品化に向けて検討していくことで決まった。
時計を見ると十二時半の三分前。
一応、予定時間内に終わったことになる。うっかり賭けに乗らなくてよかったとほっとする。
打ち合わせ時間の予定は十二時半まで。あと三十分。クライアント側は三人でああでもないこうでもないと議論し始めている。
(この感じでまとまるのかな……?)
前の部署にいたときに参加した社内会議に似ている。発言が少なくて停滞するのも困るけれど、白熱しすぎるのも考えものだ。
(これは長引きそうだなぁ)
時折り議論の合間に「これは違うな」とか「あんまり面白みがない」といった言葉が耳に聞こえてきた。
(相手が目の前にいるのにそういうことを言うって、打ち合わせでは普通なの?)
私はシュレッダーにかけた大量のボツ案のことや、この打ち合わせに間に合うように模型作り準備した玲央くんのことを思い出してしまう。たった一言で簡単に却下するけれど、その裏にどれだけかけて準備しているのか分かっているんだろうか。
そんなことを考えていると、隣りから私のノートに手が伸びてきて、余白にペンで何かが書かれた。
『ひどい顔だぞ』
私は思わず新堂さんを見る。たぶん思っていたことがよっぽど顔に出ていたみたいだ。
さらにその下にしかめっ面をした顔――たぶん私の似顔絵を描くものだから、私は思わず『打ち合わせ中ですよ』と書いて『打ち合わせ』の部分を強調するように丸で囲む。
《こいつら毎回こう。話が長い》
(こいつらって、言い方……)
《新堂さんもひどい顔ですからね》
少し顔を上げて新堂さんの顔を盗み見ると、すっかりこの場に興味をなくしたような顔だ。 それから私たちは、まるで真剣にアイデアを書き出しているフリをしながらしばらく筆談をする。
《時間通りに終わるか賭ける?》
《賭けません》
だんだんと内容が仕事から逸脱し始めたとき、ようやくクライアント側の話がまとまったようで、新堂さんが提案したうちの二つを商品化に向けて検討していくことで決まった。
時計を見ると十二時半の三分前。
一応、予定時間内に終わったことになる。うっかり賭けに乗らなくてよかったとほっとする。