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第7話:「白藤さん、最近すごくキレイになったから」


 東急東横線に乗って、横浜から渋谷へと向かう。
 今日はいつもお世話になっている、お菓子の化粧箱や缶を製作している取引先にお邪魔する予定だ。
 
 まだ11月の初めだけれど、バレンタインとホワイトデーのパッケージデザインの資料を持って相談しにいく。
 というのも、昨年までは従来の形の箱や缶にその年のデザインを施していたが、今年からは全面的に箱や缶の形も変えようということになったのだ。

 渋谷の駅に降りて、取引先のある道玄坂の方へ歩いていく。
 道中、オシャレな二階建てのカフェの前を通りかかる。
 
 ここのパフェ、ちょっとお高いけど食べてみたいと思ってたんだよね。
 そんなことを思いながら、ガラス張りの店内を軽く覗いてみる。
 
 すると、一組の男女が目に留まった。
 女性は隣の男性に負けないほどの高身長で、スレンダーな美女で海外セレブのようなオーラがあった。落ち着いたダークレッドのワンピースが、金色のポニーテールによくマッチしている。
 
 彼女たちが私の目を引いたのは、ただキレイな人だからというだけではなかった。
 
 ――悠貴?
 
 金髪の彼女の隣にいたのは、間違いなく悠貴だった。
 いつものような動きやすいスポーツウェアではなく、オリーブグリーンの上下揃いのスーツ。中にはモックネックの黒いカットソーを着ているらしく、かっちりしすぎないカジュアルなスタイルだった。
 
 ふたりはなにか会話をしたらしく、悠貴がフッと笑った口元が見えた。
 その瞬間。キリ、と心臓が締め付けられる。
 
 あんなにキレイな人と、オシャレしてお出かけしてる。

「……悩み損だわ」
 
 悠貴が私をどう思っているか、そんなことでモヤモヤしていたのがバカらしくなった。
 
 彼にとって私はただの利用者のひとりだ。
 
 意味深な言動もあの夜のことも、からかわれて遊ばれただけ。
 ……思ったより私の体がよくなかったから、興味をなくしたんだろう。
 
 心に穴を開けたまま、できるだけ無心で取引先へと歩みを進めた。

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