二次元彼氏がいるのでリアルな恋は遠慮します
 桐島くんの一言で、完全に空気が変わる。
 桐島くんはジョッキに入ったビールを涼しい顔で飲み干すと、私やギャラリーの声を無視して、タッチパネルを手に取った。

「いや、なに冷静に追加のビール頼んでるわけ!?」
「やっぱり、そういうことなの?」
「そういうこと……? まぁ、付き合ってはいませんけど」

 ポチポチとタッチパネルを操作し終えた桐島くんが顔を上げる。
 目が合った瞬間、ほんの僅かに彼の表情が柔らかくなった。

「俺が一方的に追いかけているだけですから」

 その瞬間、シーンと場が静まる。
 だけど、次の瞬間にはドッと周りが沸いた。

「ちょっ、桐島、もう酔ってる!?」
「自分の言ってる意味、わかってるよね? あれ、私たちがおかしいだけ……?」
「あなたたちが詮索するから、素直に答えただけですけど」
「いや、そうだけどさ〜。てか、芳野ちゃんは?」
「そうだよ、菖蒲は!?」

 またしても全員から視線を向けられて、顔が熱くなるどころか、背中までベッタリと冷や汗をかいて気持ち悪い。
 こんなにいろんな人から興味を持たれたこともなく、またその内容が内容なだけに、顔を上げられなかった。

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