二次元彼氏がいるのでリアルな恋は遠慮します
 桐島くんの気持ちを知っていたのに。
 たとえ、あの場で明確な答えを出さずとも、もっとうまい切り返しがあっただろうに。

 彼を傷つけてしまった後悔で、踏み出す一歩がどんどん重くなっていく。

 私は鞄を肩に掛け直すと、タイミングよくやってきた電車に乗り込んだ。

 ほんの少し前ならすぐにゲームを立ち上げて、推しに会いに行くけれど、いまはそんな気分にもなれない。

 暫くぼんやりと窓の外を眺め、運よく空いた席に腰掛ける。

 ――今日、桐島くんから電話、来ないかもしれないな……。

 あんなことを言えば、間接的に桐島くんからの気持ちを跳ね除けたのと同じだ。
 そんな最低な私に、わざわざ連絡するような人でもないだろう。

 彼から嫌われたかもしれないと思うと胸の奥が軋む。
 それだけ、私にとって桐島くんは大事な存在になっていた。

 ――最悪だ、私……。

 彼の気持ちに応えないばかりか、彼を傷つけてしまうなんて。
 あまつさえ、いまさら彼のことが好きだと明確にわかるなんて。

 じわりと薄膜が張りそうになる目を閉じ、ぎゅうっと鞄を抱きしめる。

 このまま何もかも忘れりたらいいのに、と願って、ふわりと意識が飛びかけたときだった。
 右横がもぞりと動いたのがわかって、ゆっくりと目を開けた。

< 54 / 60 >

この作品をシェア

pagetop