恋するお弁当箱
2 甘い誘い
 お昼休みをオーバーして職場に戻った咲穂は、上司に事情を説明し、自席に戻った。
あのあと、賢翔とは連絡先を交換して別れた。男性と連絡先を交換するなんて久しぶりで、心が昂揚して落ち着かない。一度はあきらめたミャミャーのお弁当箱が手に入るのも嬉しい。

 事務の仕事がひと段落して休憩コーナーのベンチで缶コーヒーを飲んでいると、莉子が歩いてきた。
 自販機で缶コーヒーを買い、咲穂の隣に並ぶ。

「咲穂、大変だったね」
「うん。どうなるかと思った」
 幸いにも過呼吸などになることなく恐怖をいなしてやりすごすことができた。あのとき、もし彼がいなくてひとりだったらパニック発作で過呼吸などの症状が出ていただろう。

「噂で流れて来たんだけどさ、ロボット掃除機が原因らしいよ」
「そうなの?」

「そう、うちと同じロボット掃除機。ビルでも使ってるらしいんだけど、フロア移動もできるように実験的にエレベーターと連携したらしいんだけど、ロボットの発信した信号でエレベーターが止まったらしくて」
「そんなことあるんだ……あ」
 思い出したような咲穂の声に、莉子は首をかしげる。

「一緒に閉じ込められた人、その会社の人だった」
「そんな偶然あるんだ」

「お弁当箱を譲ったのと同じ人だったの」
「もうそれ運命じゃない!?」
「大げさ」
 咲穂は苦笑した。
< 14 / 45 >

この作品をシェア

pagetop