恋するお弁当箱
「連絡先は? 交換した?」
「うん。お弁当箱、だぶっちゃったんだって。くれるっていうからもらう約束したの」

「咲穂にしてはやったね。偉い!」
 ばんばんと肩を叩かれ、咲穂はまた苦笑した。
 ただお弁当箱をもらうだけで、その先があるなんて思えない。

「静谷さんたち、さぼりですかあ?」
 声が聞こえて、咲穂と莉子はそちらを見た。そこには樹絵里がにやにやと立っている。

「休憩してただけです。もう行きます」
 咲穂は缶コーヒーの残りを飲み欲し、自販機の横のゴミ箱に捨てた。莉子も同様に缶を捨ててフロアに戻る。

「一時間に一回は休憩してる人に言われたくないな。ミスばっかでこっちの仕事が増えるし」
「そうだね。でもしばらくの我慢だから。頑張ろ」
「でも、まだ通告してないんだよね? 通告は一カ月前までにしないといけないから、まだまだ当分いるんだよ」
 莉子は顔をしかめ、肩をすくめた。



 翌日、出勤した咲穂は一日のスケジュールを確認した。
 十時にはお掃除ロボのメンテナンスで新日本セントラル警備保障の営業が来ることになっていた。
 営業となっているが、もしかして彼が来るかも、とそわそわしてしまう。

 果たして、十時に現れたのは彼だった。
 咲穂は慌てて席を立ち、彼を出迎える。

「いらっしゃいませ、十時にお約束の織山様ですね」
「はい。今日はよろしくお願いします」
 にこっと笑う彼に、心がふわっと浮き上がったときだった。
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