恋するお弁当箱
 優柔不断に相手の出方を探るような言葉は、傷付きたくないずるさがある気がする。だけど、勝手に期待して傷付きたくないのも事実だ。
 返信が来て、スマホが振動した。

『では明日でもよろしいですか? 良かったら夕食もご一緒に』
 咲穂はスマホをにぎりしめた。

 食事のお誘いをされてしまった。しかも明日なんて!
 心の準備が追いつかないが、いつでもいいと言った手前、断ることもできない。

『了解しました。ではまた明日、仕事が終わったら連絡します。いつも通りなら六時くらいに終わります』
 送信しながら、なんて色気のない文章だろうかと思う。もっとかわいらしく送れたらいいのに。

 そう思っていると、彼からはありがとう! と猫が喜んでいるスタンプが来て驚いた。
 仕事ではクールな感じでびしっとしているのに、こんなかわいいスタンプを使っているなんてギャップがすごい。
 咲穂はすぐに自分も持っている中で一番かわいいお礼のスタンプを返す。

 明日はなにを着ていこう。オフィスカジュアルだからおしゃれしすぎるわけにもいかない。
 咲穂はクローゼットの前で延々と悩むはめになった。



 翌日は、朝こそ仕事に集中したものの、終業が近付くにつれて次第にそわそわしていた。
 定時になったら仕事を上がり、化粧室でメイクを直す。
 口紅を塗って仕上げると、賢翔にメッセージを送った。

 ビルの一階で待ち合わせると、現れた彼に心臓が止まりそうになった。日が暮れて暗いというのに、彼の周りだけが明るく輝いている。

「お待たせしました」
「こちらこそ、ありがとうございます」
 答える咲穂の心臓はばくばくと早鐘を打ち、頬は緊張で強張る。
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